劣等生が憧れた優等生。
地元の情報誌に、今年の成人式の特集が組まれているのを見た。
新成人のインタビューのコーナーで見覚えのある顔。
「……あ、先輩だ。」
不登校だったとは言えども、多少部活もしたし、上級生の人とも少しだけでも関わっていて、それなりに覚えていることもある。
でも、この先輩だけは格別だった。
だって、私の憧れの人だったから。
真面目で、勉強もスポーツも出来て、誰にでも分け隔てなく接してくれる聡明な人。
中学校で何気なく陸上部に入部して、部活のルールや上級生の人との関わり方やマナーを手厚く教えてくれた。
部活内でグループができてしまって、馴染めなかった私に一番最初に声をかけてくれた。
不登校になって部活を辞めた後も、先輩が卒業してからも、気にかけてくれて、会う度に話しかけてくれた。
最初は「何でこんな落ちこぼれ劣等生なんか
気にかけてくれるんだろう。」「何でこんなに優しくしてくれるんだろう。」って思ってた。
でも何度も先輩の優しさと色んなことに挑戦するかっこいい後ろ姿に救われた。
先輩みたいになりたいと思った時もあった。
先輩に憧れて、先輩が参加していた国際親善派遣団に応募して、選ばれてオーストラリアに行ったっけ。
先輩の卒業式のとき、勇気を出して名札をもらいに行ったのも懐かしいなぁ。今でも部屋に大事に飾ってある。
私にとっては、心の美しいステキな憧れの先輩。
でも良い意味でも悪い意味でも目立ってた。
多分、考え方が大人で優等生すぎたからだ。
学校って、思考が大人びてる人が馴染みにくいコミュニティだって誰かから聞いたことがある()
陸上部に入って、はじめて県大会に応援で行った日。2年生の先輩に裏でこう言われたことを思い出した。
「先輩、良い子ぶっててしんどい。」「あんまり関わらない方がいいよ。」
観戦席、2年生の先輩と私たち1年生から少し離れた所に、先輩が1人座ってるのを見て、すごく悲しくなった。今でも覚えてる。
2年生の先輩が、先輩のことを辛辣な言葉で話しているところも、きっと先輩は聞いていた。
でも先輩はその後も引退するまで、2年生の先輩にも私たちにも優しく接してくれた。
言われ慣れてるのか、全く気にしてないのか、我慢しているのか、分からなかったが、私には先輩が強い人に見えた。
何でここまで、自分自身には厳しいのに他人に優しいんだろう…なんて考えてた。どこまで先輩は、完ぺきな優等生なんだろうとも。
真面目で賢くて、考え方が大人び過ぎている心が強く美しい先輩。
後輩の私からは、完ぺきな部分しか見せてくれていないだけかもしれないけど。
私はすごく好きだったんだなぁ。
そんな事を、インタビューを受ける振袖を着た先輩のキレイな笑顔を見て考えていた。
また、少しでもいいから逢いたいし、お話したいと思ってるけど、私にはまだ合わせる顔もない。
まぶぃーずも、ヒカリテラスも、私にとっては胸を張って素晴らしい活動だと言い張りたいけど、きっと先輩を目の前にすると何も言えなくなるかもしれない。
いつかは分からないけど近い将来、劣等生から自分自身を誇りに思える私になった時、また先輩に逢いたいなぁ。そして欲を言うなら活動を見に来てほしいなぁ。
先輩は今、どんな風に過ごしているのだろうか。
インタビューの写真を見る限りだと、また一段とキレイになってたから、ステキな日々を過ごしているんだろうなぁ。
またいつか逢える日まで、もっともっと成長できるように色んなことに挑戦していきたいなぁ。